社員の働き方について考えてみましょう


皆さんの身の回り、近隣の経済状況は、満足できる状況にあるでしょうか。メディアで発信される半分くらいは、景気の好循環、回復に向かっている話題のように思います。

例えば、今年の春闘では満額回答が多く、ベースアップの賃上げ平均が5%を上回ったという報道。ちなみに、春闘とは、企業別労働組合が各企業・各産業が毎年同時期に歩調をあわせて交渉することで、同調圧力をもって交渉力を高める狙いがある春に行われる労働条件の改善を経営者と交渉する運動(闘争)で、日本労働組合総連合会(連合)が集計して発表しています。

この発表の報道に労働組合を持たない従業員規模の少ない中小零細企業は、この同調圧力の効果がないだけでなく、存続の危機まで追いやられることが起こっています。

上場企業、大企業、地域の中堅企業で労働組合があるような会社は、好業績の状況の中で、内部留保、株主配当とのバランスを考慮して、賃上げが実行できますが、労働組合を持たない中小零細企業は、そもそも業績が厳しいところが多い。にもかかわらず、テレビなどで報道を見ている従業員は、自分の会社が賃上げしないのは、経営者の責任のように思っている様子がしばしば見受けられます。
ただでさえ人手不足の中で、士気が下がったり、離職の心配がのしかかり、賃上げしたくてもできないことが経営者の悩みとなっている中で責任を問われる事態が起こっている。これが存続の危機まで追いやられている姿です。
そんな業績の悪いゾンビ会社は潰れてしまった方が良い。生産性の悪い中小零細企業が多すぎることが景気があがらない原因、生産性の悪い会社は、会社も社員も豊かになれないから減らしたほうが良い。という意見を言う人達がいます。
あなたの言うゾンビ会社のような中小零細企業を潰したあと、そこに従事して収入を得て生活の糧としていた経営者や従業員の家族は、どこで生活の糧である収入を得れば良いとお考えですか。きっと、儲かる仕事に転業すればいいとか、キャリアを磨いて儲かっている会社に転職すればいいと答えるのでしょう。
その仕事にしか従事したことのない高齢者であったり、生まれ持った能力や性質で出せる成果が、あなたが思うほど出せない人だったりするんです。儲かる仕事に転業、儲かっている会社にキャリアを磨いて再就職が全員出来る訳ではないことを本当は知っている人たちです。知りつつ、最後は、個人の自己責任と捨て置くしか答えを持ちあわせていない人たちがいます。
私は、ゾンビ会社でも存続する意味があると思っています。人の日常のリズム、仕事を守り、存続していく中で再度チャンスを見出していければ、豊かにもなるでしょう。会社がなくなれば、その会社にチャンスは永遠に訪れなくなってしまします。実際に大きな借金を背負いながらも事業を継続していく中で、完済し、大成功を収めている逸話を持つ人だっています。

働き方改革の影響もまた、上場企業、大企業、地域の中堅企業を含めた優良な約1%の事業者と、中小零細企業の99%の事業者に影響の差が大きいです。運送や建設・建築業界といった業界問題にも通じます。

達成すべき成果・納期に対して必要な物理的労働量と時間がある。個々の能力と性格の違いもある。にもかかわらず、時間軸で規制をかけると、高額な給与を提示できて、多くの人材を登用しやすい上場企業、大企業、地域の中堅企業では人員も多く、人材も多彩なため、内容を分担して、仕事に従事する時間とプライベートのワークライフバランスが適正にとれるでしょう。働き方改革の成功が実感できます。
一方、中小零細企業では、受託や商品、サービスの値上げの価格転嫁が現実にはできず、利益を増やし難い中で、高額な給与は提示できないため、人材も集めずらく少人数で、個々が多くの仕事をマルチにこなさないとならない現実がある。すると、低賃金で長時間にならざるを得ないということになる。働き方改革は、中小零細企業には士気を下げ、離職を促すことになりかねません。
原因である価格転嫁を実現させるべく下請け法を使って公正取引委員会に連絡してはどうか。効果があるのは、発注者が上場会社や大企業の場合だけなのが現実です。発注者が中堅・中小企業となれば、受注先を変更するように発注先が動くのが現実です。つまり、言い出せば仕事を失うことに直結してしまうのです。

働き方改革は、その運用について見直した方が良いと思います。

多様性を認める時代だというのであれば、働き方の自由、多様性を認めてもいいんじゃないかと思うのです。過労死のような不幸を撲滅させるためには、時間軸で縛るのではなく、パワーハラスメントの強化で縛った方が効果があるように思うのですけれど。皆さんはどう考えますか。

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