資金繰り表の活用が、やはり重要


資金繰り表を活用して頂いている皆様に、日々の業務で忙しく統計資料を分析してマクロ的な検証に時間を掛けられない。
という声にお応えする形で、私の日々の業務の一部を共有する事でお役に立てればと思い毎月情報を提供させて頂いております。

GDP速報値と人口統計を主軸に統計資料をご紹介し、一緒に考える時間を持ち、ビジネス雑談に寄与出来れば幸甚です。

今回は、GDP速報値(2次速報値)と日銀短観を見ながら進めたいと思います。

GDPの2018年の推移は、四半期年率換算で、一期▲1.3%、二期2.8%、三期▲2.5%です。年率換算は、各期毎の水準で1年間を経過したら…という前提で捉える(簡易的に考えれば各期GDP前期比%×4です)と分かりやすいです。

GDPの総額はおよそ540兆円、国内で支出している総額と考えるとイメージが付きやすいでしょう。どこに支払っているのかを、国内需要、公的需要、財貨・サービスの純輸出の分類に分けて統計資料としています。そうすると、どこにお金が流れているのかが、四半期毎に計測していけます。民間の需要が伸びていれば、景気が良く感じられるはずです。国民がお金を使っている傾向にある、使える環境にある。と判断しているということです。

2018年で言えば、1~3月期より、4~6月期は民間需要が大きく伸び、景気が良くなってきているなぁ。お金を使っても良いなぁ。と思える環境にあったという事になりますが、皆さんの肌感覚(実感)では如何でしょうか?

7~9月では、あれ?ちょっと待てよ。景気はこのまま良くなる訳ではなさそうだぞ。と春のようなお金の使い方を止めてお財布のひもを引き締めた。という事になります。前期比で表示されていますから、そのまま景気が良くなると思えていれば、少なくても民間需要はプラスになっていくはずです。でも、そうはなっていない。とすれば、自分の会社や家庭での近い将来の戦略立案の参考にできるでしょう。

今回のGDP2次速報値では、ポイントが2つあります。1つは、ずっと低迷していた民間住宅の需要が改善されていること。もう一つは財貨・サービスの輸出入の低下。

民間住宅の需要の改善はもう少し深堀りして検証してみたいところです。人口統計と合わせて考えると、民間住宅はまだまだ供給過多の状況が続いて行くように思うのです。つまり民間住宅はマイナスが続くと思っていました。消費税増税前の駆け込み需要というわけでもないでしょう。ですが、ここにきて改善数値。皆さんはどのように思いますか?

以前マイナスを続けていた民間住宅需要の数値が改善してきた。とされたときは、仲介の活性化で中古市場の仲介が増えたことが要因という事がありましたが、今回もそうなのでしょうか。

2つ目の輸出入のマイナスが気になるのは、世界経済の悪化というキーワードを連想させるからです。日本の景気停滞の原因を、一時期に世界経済の悪化を要因としていた事があったからです。その時は、国内需要を喚起して日本は日本の景気回復策が必要だと思いました。世界経済の悪化を要因にして、だからしょうがないと諦めるのは違うんじゃないかと思ったからです。今回の金融、貿易の鈍化は、また同じ事になりはしないか…と思うところです。景気減退の要因を世界経済の悪化として何となく納得してしまうのは、違和感があります。

内閣府 四半期別GDP速報 2018年7-9月期・2次速報(2018年12月10日)より抜粋


では、日銀短観では何が反映されているでしょう。業況判断では大企業では全業種で「良い」と判断している会社が「悪い」と判断する会社を上回っていますが、中堅、中小となるほど数値に陰りが出てきているという印象を受けます。知って頂きたいのは、業況判断でも業況判断(続)という統計数値が公表されている事です。ここでは、「良い」「悪い」とは別に「さほど良くない」という項目があるのです。すると、大企業、中堅企業、中小企業のどの区分でも、概ね「さほど良くない」を回答しています。

良いと答えているものの、さほど良くないという判断を経営者はしているわけです。ここに注視することなく、景気が回復しているように見える統計数値を選びだし、メディアを利用して景気上昇を流布させて、みんなの肌感覚(実感)との乖離を広げても政治不信につながるだけだと思うのです。

日本銀行 短観(概要) 2018年12月 第179回 全国企業短期経済観測調査より抜粋

他にも短観の中には気になる項目が多くありますが、今回はポイントだけ。

在庫がまだ過剰気味で仕入れ原価が高騰傾向にあり、販売価格に原価上昇分を価格転嫁できていない。という数値は景気後退を予感させます。

企業の経常利益は全規模で前期比マイナス傾向にありますが、当期利益は前期比プラス。この数値が示すところは、本業では、どこも厳しい。という事だと思います。業況判断(続)で「さほど良くない」が大半であることとも一致します。

そんな中で、企業はどこにお金を使って投資しているのかというと、設備投資とソフトウェア・研究開発投資が好調なようです。遊休資産になりそうな土地投資は減退し続けています。その数値を見ても、どの規模の会社でも余裕資金が多くあるわけではないことが伺えます。投資対象の選択肢が広がっていますから、この統計数値が余裕資金の有無を判断する資料にはなりませんけど。

雇用については、皆さんご承知のとおり人手不足が数値として出ています。私は人手不足は単なる数の不足ではなく、企業が求める能力がある人が不足していると捉えています。

その他では、資金繰りは楽だとする会社がどの規模の会社でも苦しいという会社を上回っており、金利も低く、融資は出やすいという数値があります。うちの会社ではそう思えないという経営者の方々が多くいるでしょう。

だからこそ、資金繰り表を改めて経営ツールとして重要視して頂きたいと思うのです。

今回の統計分析では、景気が悪くなる要因が増えてきていますが、業務効率を上げ業績を回復させるための投資や、新規事業に挑戦するための資金は出やすい環境にあると言えます。今こそクリエイティブな仕事を始めてみましょう。

今年も多くの方に資金繰り表を使って頂き、メルマガの購読ありがとうございました。

2019年は年号も変わり、心機一転して何かを始めるには良い年となりそうです。皆様と共に来年も前を向いて行きましょう!


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