平均で統計を取れば景気回復。それは格差拡大の問題を露呈


資金繰り表を活用していただいている経営者と、共に資金管理をしている財務、経理担当者の皆さんは、夏休みが明け、9月に入り平常時に戻って『さあ、年末に向けてキャッシュ利益を伸ばそう!』と思った矢先に『9月って稼働日が18日しかない。』と肩を落とした方も多いのではないでしょうか。

今夏は、大雨、台風、北海道地震と日本の各地で甚大な災害被害が出ました、被災エリアの事業者と関わる周辺事業者は、平時を取り戻す事も出来ずにいます。それを思えば、8月の夏休みで社内も取引先も担当者不在で仕事が進まない事や、夏休みが終わって9月になっても稼働日が少ない事に嘆くより、事業が継続出来る事に感謝すべきかもしれません。

毎月GDPと人口統計を気にかけながら、周辺の統計資料や関連資料をビジネスの雑談のネタとして使って貰えれば幸いだと思い情報を共有しています。

9月10日に発表されたGDPの2次速報値では、年率3%。1次速報値では1.9%でしたから大幅に上方修正されました。『本当に?景気の良くなっている実感がないのは自分だけ?』とお思いになる方も多いことでしょう。そんなことはないです。内訳と身の回りの実態を俯瞰して結び付ければ、やっぱり国の統計資料でも官僚は、景気が良くなっているとは思っていないんだな。というのが見えてきます。統計数値を政府の意向にあわせて全項目のつじつま合わせは、さすがに出来ないのでしょう。政府発表や報道では景気が良くなっているとわかりやすい数値を基に煽っているように思います。今回の数値上昇は、物価上昇率が加味されるデフレーターの調整で数字のマジックでは?と思いましたが。伸び率は変わってないそうです。

ちなみにGDPデフレーターとは、簡単にいえば、物価の変動によってGDP数値を調整するというものです。GDPが1%上昇して、物価が1%上昇したら(言い換えれば、支出が1%上昇して、商品単価が1%上昇したら)実質0で、景気がいい感じはなくなりますよね。逆なら?支出が増えて、単価が下がれば、同じ金額でたくさん買えるので、景気がいい感じがしますよね。感覚的に理解できますでしょうか。物価が上がるとGDPの伸び率が下がり、物価が下がると伸び率が上がるような調整効果があるものです。

今回の要因は民間企業の設備投資が思った以上に伸びたことが一番の要因だそうです。私の周りでも、産業機械の導入やIT補助金を活用したインフラ整備の導入がちらほらありますが、決して需要拡大が動機ではなく、業務の効率化が動機です。売上が伸び悩む中で、何とか業務の精度をあげロスによるリスクを軽減するため、コストとタスクを軽減するためです。利益を確保していくための消極的動機です。

ここ最近ずっとマイナスで、減速している民間住宅が0.3%改善されたのは、不動産仲介手数料が増えたからだそうです。中古市場が新築より活況だということになります。新築が減少しているということです。実感としても都心近郊や地方都市での空室率の上昇を鑑みれば住居の過剰供給の感覚と合致してくるでしょう。

重要なのは、民間消費が上がっているわけではではないので、個人単位では景気が良くなっている実感がわかないのはしょうがないとGDP数値でも表しているということです。国民総所得は増えている統計資料はあるのの消費があがっている数値が出せない事に矛盾と問題点がある事をまずは踏まえましょう。平均値の統計と、実感とが一致しなくなるのは、格差が広がっているからです。

内閣府 GDP4-6速報値(2次速報値)H30.9.10より抜粋


デフレーターのところで、物価について触れましたので、物価上昇率2%を目標に金融政策に取り組む日銀の政策を見て、資料のクロス検証をしてみしょう。

物価上昇率2%にむけて徐々に上昇率を高めていくと考えている。とのことです。

理由は、企業も家計も所得から支出へ前向きな循環メカニズムが持続してる。輸出も海外経済が順調で緩やかに増加。金融政策で緩和的な金融環境と政府支出による下支えがある。などの事からです。

全体的に分かりやすく言うと、日本全体でみれば、緩やかに景気上昇に向かっているという事です。

一方で、マイナス金利の持続、国債の買い入れ、リスク資産の買い入れ維持、マネタリーベースの物価上昇率2%まで拡大方針を継続。と景気回復の為の施策を継続して実施していくとしています。

景気の上昇に向かっているけど、まだ足りないと思うので、回復の為の政策は継続するよ。という事でしょうか。

上昇って言いたいけど、やはりまだ、上昇していると言えない。ということでしょう。

2ページ目の下に※でコメントが出ています。※のコメントも注目してみましょう。


日本銀行 当面の金融政策運営について 2018.9.19より抜粋

今月の2つの資料の検証からも、私たちは景気を国が政策で良くしてくれる。と他人任せにしていては、いつ景気の回復を実感できるかわかりません。自分の今を改善するためには、自分の今の位置(人、資金、需要)を個々に把握し対策を練ることです。

今月の統計資料から、私たちに直接的に役立つ情報は、資金調達がし易い環境が続いているということでしょう。特に新規事業、起業には資金調達しやすい環境であると言えそうです。


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